報告「闘病記フォーラム」2009.10.24

「闘病記研究会フォーラム『闘病記は医療者教育に役立つことができるか』」の報告です。
 以下、簡略にご報告させていただきます。(詳しくは12月末発刊の『星と泉』第4号にていたします)

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 10月24日、大阪府社会福祉会館にて開催された「闘病記研究会フォーラム『闘病記は医療者教育に役立つことができるか』」には、闘病記を出版する立場の者として興味を持って参加しました。
 午前中はまだ席に余裕があったようですが、午後は椅子が足りず受付の椅子まで会場に運び込み座る場所を確保するぐらいに混み合いました。
 基調講演の山口大学の星野晋先生は、冒頭でシャーマンや祈祷師の行いは、実は病を聞き明らかにするという点で医療のナラティヴ、すなわち闘病記に通じるという医療人類学からの興味深いお話をされ、慶應義塾大学の鈴木晃仁先生は、欧米における様々な文献資料の中から闘病記を拾い上げ、その興隆について学術的な内容を展開されました。いずれも知識欲を刺激される惚れ惚れするお話でした。
 闘病記を収集し分類することでは先駆者である古書パラメディカ店主星野史雄氏が、「がん闘病記年表」という貴重な資料を配布されました。また、インターネット上で闘病記ライブラリーを公開されている健康棚プロジェクトの石井保志氏が、ジャンル分けの前に立ちはだかる図書館の閉塞性について熱弁をふるわれました。さらには、その闘病記ライブラリーを実際に設置されて活用されている山陽小野田市立中央図書館長の津田恵子氏と、聖路加看護大学看護実践開発センターの石川道子さんがそれぞれ活動のご苦労を報告されました。

 今回は闘病記という書かれた本だけではなく「闘病者の語り」と言うことに注目が集まりました。
 闘病体験者がその経験を医師や看護師の修習生に語る「看護講師」に取り組んでいる“いいなステーション”代表和田ちひろ氏と、映像で闘病者の語りを収録されているディペックス(DIPEx)の佐藤りか氏の活動報告、さらには鈴木教授のお話もそれに関連します。
 驚きの場面もありました。和田ちひろ氏は発表の中で、「30年ほど前に奈良の膠原病の患者会の方が、同じ病で苦しんでいる闘病者やその家族ために、闘病の語りを始められたのが語りの始まりと位置づけられます」と発言されました。すると、その後の質疑応答者の中に「実は、その患者会は私たちです」と、なんと!関係者が参加されていたのです。その方曰く「私たちの活動が、このような形で継承されているのだと知り、今日は大変感激いたしました」。会場はどよめきました。
 闘病記の著者酒井明子さん(『二度目の手術~心臓病と共に』星湖舎刊)の、1冊の闘病記を出したことで同病者といろいろ話ができる輪が広がったという報告は、闘病記の本来の姿を言い当てており、参加者の共感を得たはずです。さらに、闘病記を読んで看護に役立てている看護師の報告もありました。

 学術的に闘病記を研究するにも問題点はあります。それは闘病記が玉石混淆のため医療者教育に適さないものが多いということです。星野史雄氏の読んですぐにゴミ箱にその本を投げ捨てたというお話や「これから出版される闘病記に望むこと」の提案、さらには鈴木教授の「排除されるべき闘病記」などの発言にそれは表れていると思います。
 次回、もし闘病記研究会が開催されるならば、そろそろ出版者側からの具体的な見解を提出させていただく段階かなと痛感いたしました。

 最後に、今回のフォーラムについて印象的だった鈴木教授の一言を添えておきます。
「今私たちは、まさしく闘病記の興隆と呼ぶにふさわしい場に立っている。もしかしたら、その焦点に立っているのかもしれない。もし、50年後100年後に闘病記の歴史というものを書く歴史家が現れたなら、闘病記が興隆し、社会的・文化的な注目を浴びるようになった、まさにその兆しとして記録される場になるでしょう」

この記事へのコメント

星湖舎
2009年10月28日 01:24
闘病記フォーラムでご一緒だった“いいなステーション”の和田ちひろさんから、11月1日(日)に東京である公開シンポジウムの案内をいただきました。

公開シンポジウム2009のご案内【医療教育への患者参加~闘病体験を教育現場にどう活かすのか?】
公開シンポジウム2009
http://www.e7station.com/lecture/jisseki091101.htm
日 時:2009年11月1日(日)13:00~17:00(12:30開場)
場 所:東京医科歯科大学特別講堂(1号館9階)
参加費:1,000円(学生の方は学生証提示で無料)
定 員:100人
申込み:edu@e7station.com宛に、①ご氏名、②メールアドレス、③ご所属をお知らせください。学生はその旨、記載ください。受付後、事務局より申込番号を返信いたします。